2000年 9月 7日(木) Part2


 金花湯ヘのアプローチ



粘土質の土と下り坂に阻まれてタイヤが空回りしたが、少し前へ出てもう一度思いっきりアクセルを踏み込むと、どうにか脇の雑草のスペースへ車体を入れることに成功。しかし前は岩場で、少ししか車を前に出すことができない。

この時、さっきえぐられた部分に枯れ木をはめ込んだことが役に立った。
前に立ちはだかる岩場ギリギリまで車を数十センチ前に出す。はめ込んだ枯れ木の上に前輪を乗せ、もう一度車を切返すことができたのだ。ただし、雑草の生えているスペースの右側にも大きな岩場があり、車体は、ぎりぎり一杯。

もう一度バックして切り返す際に、私は、「こうなったらちょっとぐらい車が傷ついてもいいや!」という気持ちで岩ギリギリまで「オーライ。オーライ」(本当は全然オーライって感じじゃなかったけど)と誘導し、何度か切返した結果、やっとUターンして坂を登ることに成功した。

RAV−4って意外と大きいんだなあ。こんな細いカーブで、よくUターンできたよ。みのりんってかなり運転技術があるのかしら?なんて思ったりして。

最大の危機が去った瞬間、また恐怖が襲ってきて、急いで助手席に乗り込むと最後のカーブまで勢いよく上り坂を戻った。

どうにか最後の急なカーブの手前まで戻り、スペースを見つけて駐車すると、改めてかなりヤバイ状態だったことを再確認。二人とも暑さでは出ない汗で全身じっとりとしていたよ。

よくよく考えてみると、もしあの場でスタックし、車を動かせない状態になった場合、27Kmの道のりを熊の恐怖に怯えながら宮内温泉まで戻り、助けを求めにいかなければならなかった。

もし、戻る途中に足を踏み外したり、熊に襲われたりした場合、入林届を書いていない私達の存在は誰も知らないから、救助を待っても誰も来ないわけだ。望みとしては旅行から帰ってこない私達を心配した両親が、「金花湯周辺を捜索してください!」って訴えてくれるのを待つか、林道入り口で作業をしていたおじさんが、「そういえば、あの車戻ってこないなあ?」と疑問に思ってくれるかを期待する程度しかない。それにしたって捜索開始まで2〜3日はかかるだろう。時間が経過するにつれて逆に恐怖が増してきた。

こんな思いまでして27Km進んできたのだから、金花湯を体験せずには帰れないという思いが強くなった。(その思考がちょっと変?な二人)

完全防備で金花湯を目指そうと準備をしていると、背中の右側に「チクッ」っと強烈な痛み。
「痛い〜!」何かに刺されたみたい。その数秒後、今度は背中の左側に「チクッ」とした痛み。「痛い!痛い!」

急いでTシャツをめくりあげて、みのりんに背中を見てもらったんだけど、何にもなっていない様子。虫に気をつけなきゃって話をしながら、長袖で防備して、首にはタオルを巻き、帽子をかぶって軍手をはめて、これで大丈夫だろうと車の外に出ると、すぐに「チクッ」っと左耳上部に痛みが走りました。「痛い!」思わず耳に手をあてると、蚊の小さな感じの虫がつぶれていました。

さっきの背中の痛みと同じだったので、たぶん同じ虫なのでしょう。まったく油断できませんね。私の様子を見たみのりんは、長袖のTシャツだけでは不安になったようで、少し暑かったけど、ウインドブレーカーを着ることに。だってさっきは私も背中をTシャツの上から刺されたくらいですから。

準備を整えた二人は、携帯用のラジオを首からぶら下げて、電波が入りやすいNHKの周波数にダイヤルを合わせ、大音量でかけながら進みはじめました。スタックしそうになった道を徒歩で進み、改めてすごいとこへ車で入り込んじゃったことを再確認。滑らないように注意しながら下っていきました。

800mくらい歩くと川にぶつかりました。どうやら、メールでいただいた「最後は800m徒歩」という所まで車で入りこんだようでした。ほんと危なかった〜。

渓流の向こう岸に、道らしいものがあるかどうかを探しました。道と呼ぶのかわからないような、腰を屈めて進むような小道がありました。童話の「不思議の国のアリス」に出てくる、アリスがうさぎの後をつけていくようなイバラの小道って感じです。

急流に足を取られないように、近くにあった枝を杖代わりに使って、石の上を進み、やっとのことで向こう岸に到着。小道の奥の方を覗き込んで確認してみました。ちょっとぬかるんでいますが、足跡を発見。(もちろん人間の。熊じゃありません。念のため)
絶対ここでいいんだ〜。っていう確信を抱きつつ、腰を屈めて進み始めました。

左右そして上まで、雑草のような木々が茂っているので、腰を屈めないと進めません。掻き分けながら、ぬかるんだ道を進みます。いただいたメールに「最後の徒歩には長靴が必要です」って書いてあったのは、このぬかるんだ道があるからなんだな〜。と思ったけど後の祭り。トレッキング用の靴をはいてきてしまったので、中まで水は入るし、ぬかるみで無残にもドロドロです(^^;

そんなことを気にする余裕もなく、歩きながら、「熊さ〜ん、出ないでね〜」「熊さ〜ん、ジャマしてごめんね〜。すぐ帰るから怒らないでね〜」などと大声で叫び、時々爆竹を鳴らしながら進んでいきます。腰につけた熊よけの鈴はほとんど音が鳴っていませんでした。(屈んでいたせいかな?)

すると、前を歩いていたみのりんが突然大きな声で「わ〜」と叫びます。
「えっ、何?何?何が起こったの???」と、びっくりして前方を見ると、1mくらいのヘビが私達の足元を横切って行きました。
さすが北海道自然ワールド。でも熊じゃなくてよかった〜。ヘビくらいならかわいいもんです。毒蛇じゃなさそうだし。でもこれ以上野生動物たちと遭遇したら、NHKの「生き物地球紀行」になっちゃいそうなので、かなりのスピードで歩きます。

川を渡ってから10分ほど進むと、視界が突然開けました。太陽がまぶしい。少しひらけた場所に出たのです。左側には、温泉の成分が長年かけて蓄積されてできた白い岩のようなものがあります。

写真で見た 「金花湯」 のイメージに近い雰囲気が漂っていました。

しばらく踏みしめられた所を進むと、ついに右手に「金花湯」の姿を発見!!
「あった〜2年越しのチャレンジついに達成!!やった〜!」思わず二人で絶叫してました。
ここまで来る道のりの長さを思いつつ…


      
   金花湯発見                        源泉


金花湯は、エメラルドグリーンの不思議な色をした素敵な温泉でした。

太陽の光線で色が変わるといった種類のものでなく、お湯自体がそういう色をしているようです。こんな色の温泉は、見たことありません。

まさに秘湯とはこのことだと実感。秘湯度5つ星です。早速、みのりんが湯船に手を入れ、湯加減を確認。
入浴には快適な温度です。

10mほど離れた場所にある源泉から湯船までは、幅10cm程度の溝が掘られていて、そこから絶え間なく湯船に向かってお湯が流れてきています。


      


湯船の大きさは、写真で紹介されていたものより、若干小さく感じます。温泉の成分が少しずつ蓄積されて、湯船が小さくなってきているのでしょう。ひょうたんのように、真中がちょっとくびれた形です。あと何年かこのままにしていたら、湯船が埋まってしまうかもしれません。しかし、小さくなったといっても、3〜4人は入れる大きさです。この湯船を作った方に感謝です!!

あまりゆっくりしていても、熊が怖かったので、入浴は早めに切り上げて帰途に着きました。帰りも長い道のりです。ただし、一度来た道だという安心感があるので、気分的には少し楽でした。

小道をすぎ川を渡り、車に戻る頃には二人とも汗びっちょりになっていました。車の中でしばし放心状態。

帰りの林道も恐怖だったのですが、道さえ間違えなければ帰れるという気持ちでドキドキは少しおさまりました。行きは、写真を撮る余裕さえなかったので、帰りに分岐点や橋を写真におさめ、最後にゲートの写真を撮りました。


           
     最初のゲート                          スタックしそうだった場所


ここで、「スタックしそうになった時の車の写真を撮っておけばよかったね〜」なんて軽口を叩いたのですが、
みのりんに、「パニックになってて、そんな余裕なかったくせに。写真を撮るなんてこと、あの時考えられた?」
って言われてしまった。

そりゃあ、あの時は、二人ともカメラのことなんか、これっぽっちも頭の中になかったもんなあ〜。でもほんとよかった。

林道の入り口近くには、まださっきのおじさんの車が停まっていましたが、おじさんは、少し奥まった場所の草を刈っているようで、姿は見えず、草刈り機の音だけが響いていました。おじさんに助けを求めることにならずによかったとほっとして通りすぎました。

宮内温泉の舗装された道路に戻ったときは、二人ともかなりぐったりと疲れていました。宮内温泉を出発してから戻るまで、気が付くと4時間を要してたのです。

前回、今回と恐怖の林道の話がメインになっちゃいましたね。
温泉は本当にすばらしかったんですけど、たぶんもう2度と行くことはないと思います。っていうか、もう怖くていけません。ふう。

よくたどりついたな〜と自分でも感心してしまいました。
この日の続きは、次回の日記に書くことにします。