2000年 9月 7日(木) Part1


 ニセコ大湯沼--→宮内温泉--→金花湯を目指す途中



久しぶりの布団で目覚めると、外は朝もやでした。6時から露天風呂に入れるので、早速朝風呂を楽しみました。朝食を食べ終わる頃には、徐々に霧も晴れ始め、いいお天気になってきました。
8時半にニセコを出発して、一路島牧村を目指します。

10時には、林道スタート地点の宮内(ぐうない)温泉に到着。
左に行けば宮内温泉、まっすぐは行き止まり、右は、金花湯へつづく林道の始まりです。まず、詳しい金花湯へのルートを教えてくれた方のメールを片手に車の走行距離を0にリセットしました。
いよいよスタートです。

金花湯へのルートを詳しく教えてくれた方からメールは、次のような書き出しになっていました。

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>チャレンジの際、留意すべき点として、
>1.単独での入林はおすすめできません。最後は約1キロほど徒歩になりますの
>  で、熊との遭遇が心配されます。私は歩いている間、友人と2人で馬鹿でか
>  い声で話し続けていました。(これも結構辛いモノがありますが。ハイ)
>2.国土地理院の地形図はあまりあてにならない。
> ・温泉の位置は確認できても、林道の分岐が多く、途中走っている間に自分の
>  位置を見失いやすい。国地院の地図には温泉マークもない(五万分の1)
>3.最後の徒歩には長靴が必要です。
>4.入林届は必ず出しましょう。(林道のゲートの横にあります。下山の際の記入も)
>5.入林は午前中の方がいいと思います。
> ・宮内温泉を出発して金花湯まで最低1時間半はかかります。温泉でゆっくり
>  して、帰路のことも考えると…。夕方は熊もヤバイし…。
> ・入林届を見ていたら「夕方になってしまってあきらめた。」「どこにも温泉
>  がない!」というコメントも書かれていました。

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こんな感じなのです。かなりの覚悟が必要ですよね。実家のオババに、このメールを見せたのですが、「お願いだから、こんな怖そうなとこに行かないで!」って懇願されました。
しかし、私達の決意は変わりません。無事かどうかを連絡するってことを条件に許してもらいました(^^;

右の林道に入って500mくらいは、畑や小屋もあり、人が生活している雰囲気が漂っていました。
しかし、小さな橋を渡り奥に進んでいくうちに、そんな安心感もなくなり、北海道独特の林道の風景になってきました。

この人のアドバイスを信じて、かなり踏まれた林道をひたすら進みます。

3kmほど過ぎたところに車が置いてあり、その先に、おじさんが座っています。どうやら電動の草刈機の刃を交換していた様子。林道の整備をしていたようです。私達の登場にかなりびっくりしていました。そりゃそうですよねえ。こんなとこを通る車があるなんて想像していないでしょうから。おじさんには申し訳なかったのですが、ちょっと避けてもらって先へ進みます。

メーターのカウンタがなかなか上がらない気がして心臓がドキドキ。もし5km以上走ってもゲートがなかったらどうしよう・・っと・・・・・・。

メーターの数字が5Kmを過ぎたあたりで、左にカーブをすぎるとゲートが見えてきました。
よかった〜。
まずは第一段階突破。とりあえず車を降りて様子をみてみましょ。


    看板類


幸いゲートは開いていました。
しかし、メールをくれた方が言うような、「入林届」らしきものは見当たりません。脇には「熊出没注意」って大きな看板が立っていて、営林署の看板には、「入林する場合は何があっても責任をとらないので個人の責任で」みたいなこと書いてあるし…。

ドキドキする要素がまた増えちゃったけど、ここまで来たら行くっきゃないでしょうってことで、車に乗り込みゲートをくぐりました。入林届がなかったことがちょっと不安ですが、まあしかたないでしょう。

ゲートをくぐった後ひたすら進む。どうやらうちの車の示す走行距離と、教えてもらった距離では200mくらいずれているようだが、ここまでは指示どおりの道を来ているような気がする。
それにしてもどこまでも林道が続いていて、森に迷い込んだヘンデルとグレーテルの気分になる。本当にこの道でいいのか?

常に疑問が頭をかすめる…。走行距離のメーターとにらめっこ。こんなにずっとメーターを見てたことは初めてだ。

路面は、奥に進むにつれて、ガレ道になってきた。崖から落ちた石が沢山落ちていたり、雨水の通った後が深くえぐれていたり、まだ水溜りの残っている場所があったり…。
できるだけ慎重に車を進めるみのりん。メーターをにらむ私…。

北海道の林道を走るのは慣れているつもりだったけど、甘かった。今まで走ったどの林道より荒れている。メールで指示されたとおりに、作業道と合流した後、橋が現れるのをひたすら祈る…。

あっ!!最初の橋だ!!

ほんとにガードレールが黄色に塗ってあるぞ。かなりくすんで色が抜けかかっていたが、確かに黄色だ!! 勇気を出して進み続ける。そしてオレンジ色の橋と白色の橋が現れたときは、絶対に間違っていないと確信した。


      
   黄色い橋                          右奥に大岩


最後の橋を渡り進みつづけると、確かに目印になるような大きな岩が分岐点に現れた。右方向の道の方が踏みしめられている・・・が迷わず信じてハンドルを左方向に切った。かなりの上り坂だ。ガレ道はさらにひどくなり、体が左右に振られる。確かにこれでは、普通車は底を擦ってしまうだろう…。

愛車RAV−4君も時速10Km程度でゆっくりと進む。廃道?と思うような道が続く。メールで教えてもらわなければ、絶対に違うと引き返すような道。

信じた私達は、ひたすら前を目指す。メールの指示では、もうそろそろ林道の終点になるはずだが…。しかしまだ道は左に急カーブしながら下っている。

みのりんは迷わずハンドルを左に切った。

左に入った途端に道が粘土質に変わり、水の流れた後が轍と同じくらいの位置にあり、道の左右両側が深く掘られてしまっている。ひどい個所では、50cmくらい掘られた状態だ。

緑も濃くなり太陽の光も差し込んでこない鬱蒼とした森に変わった。

手がじっとりと湿り気を帯びて冷たくなってきた。

ズルッ、ズルッ、とタイヤが左右に振られ、まっすぐに進めない。右に避けても左に避けても、深い溝にはまり込んで、車が斜めになるのだ。

最後の左カーブから200m程下ったところで、このままでは戻れなくなるという恐怖に襲われた。こんな道がどこまで続くのか…。

この先は右カーブになっていて、どのような状態になっているのがが見えない。そこで私は車を降りて、どこかUターンできるようなスペースがあるかを走って見に行くことにした。

林道は鬱蒼とした木々に囲まれ、通れるスペースは車1台がやっとという幅。

車を降りて200mくらい走ったが、ずっと先まで同じように、深くえぐられた下り坂が続き、粘土質で足元も滑りやすい。路面状況はどんどん悪化するようだ。Uターンできるような場所も見あたらなかった。

無我夢中で走ってきたが、一人だということをハッと思い出した。こんな状況で熊にでも遭遇したら!?急いできびすを返し、エンジン音のする方向へ走って戻った。

みのりんも車から降りてあたりを見渡していた。この先もダメだということを伝えると、この場でUターンすることを決意。右カーブの右側は、岩場になっており、左側は、岩と雑草で覆われている。

その雑草を少し踏み慣らして足場を確かめてみた。若干のスペースは作れたが、バックして入るスペースとしてはどう考えてもギリギリ。少しでも方向を間違えると右後方に苔の生えた大きな岩があるので、ぶつかることになる。

しかも道と雑草の間は段差になっていて勢いよくバックしないと上れないだろう。切り返すにしても、前には岩場が立ち塞がっているので、数十センチしか前に出ることができない。何度か切返して戻れるかどうか…。粘土質の道の両側は50cmくらいえぐり取られているので、そこにタイヤがはまった場合は、スタックして絶対に抜けられないだろう。ここで冷静に考える…。

右側の岩場の脇も50cmほどえぐられていたが、よく見ると、直径30cmくらい、長さ2mくらいの枯れた木が近くに横たわっていた。

みのりんに私の考えを話して、二人でその木を力一杯持ち上げた。その木を、道のえぐられた部分にはめ込むことに成功。みのりんは車に乗り込み、右カーブを少し下ったところで車をバックさせる。

「キュルキュル・・・キュルキュル・・・・・」むなしいタイヤの音。
アクセルを踏んでも下り坂と粘土質に阻まれてから廻りしているのだ。

みのりんがガラスの向こうから「どう?」と聞いてくる顔。私は手を横に振り「だめだよ」のポーズ。頼むから動いてくれ!! 祈る気持ちで見ていると、みのりんは、1mくらい車を前に進めて、今度は思いっきりアクセルを踏み込んでバックしてきた!

・・・・・・さて、万事休すの二人。運命はいかに!?